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逆翻訳チェック

翻訳が返ってきました。ドイツ語、フランス語、日本語。どれも埋まっていて、体裁も整っています。ぱっと見では問題なさそうです。ですが、自分で読めない言語で「問題なさそう」に見えることは、検証ではなく思い込みです。そして翻訳が静かに取り違えうるものの中で、いちばん困るのが、いちばん正しくあってほしいもの――意味です。

backTranslation ステージは、そのギャップを人のダブルチェックなしで埋めます。各出力をソースロケールに逆翻訳し、その往復結果をAIが元の原文と比較して、意味がずれた箇所を検出します。往復しても意味が保たれたはずだと信じる必要はありません。パイプライン自身が、それを確かめます。

text
stepId: backTranslation

このページでは、このステージだけを取り上げます。各ステップで何をするのか、意味のずれをどう判定するのか、どのケースが自動修正されるのかを説明します。パイプラインが初めてなら、各ステージが中核の翻訳ステップをどう包むのかは パイプラインの概要 から確認してください。有効化するには パイプラインを設定する、実行結果の読み方は パイプライン実行を確認する を参照してください。

このページの内容

  • チェックの仕組み
  • 意味のずれの判定方法
  • 定番の手法を自動化
  • 有効にすべき場面
  • 結果の読み方

チェックの仕組み#

このステージは中核の翻訳のあとに実行され、rephrase が有効な場合はそのあとに続いて実行されます。つまり、常にその時点での最良の出力、すなわちそのまま公開されるテキストを検証します。流れは 3 ステップです。

1

逆翻訳する

翻訳済みの出力は、同じ エンジン設定――glossary、ブランドボイス、instructions――を逆方向向けに調整したうえで、ソースロケールへ翻訳し直されます。単なる参照や照合ではなく、実際にもう一度翻訳します。

2

意味のずれを検出する

AIエージェントが逆翻訳と、あなたが送った元の原文を比較し、差異があればその重大度を minor、major、critical のいずれかで判定します。

3

必要なら修正する

判定が major または critical の場合は、追加の AI パスで順方向の翻訳を調整し、意味のずれを解消します。minor の差異は可観測性のために記録され、そのまま残されます。言い回しの違いだけで出力を書き換えることはありません。

つまりこのチェックは、意味がずれたことを知らせるだけではありません。重要なケースでは、その翻訳がユーザーに届く前に順方向の翻訳まで修正します。

意味のずれの判定方法#

往復翻訳しても、原文が一語一句そのまま返ってくることはありません。翻訳者が二人いれば――あるいは一つの AI が二方向に訳しても――同じ内容を別の言い回しで表現するのは自然なことで、不具合ではありません。重要なのは、無害な言い換えと、意味そのものが動いてしまったケースを切り分けることです。

重大度意味ステージの動作
minor表現は違っても、意味は保たれている状態。類義語への置き換え、語順の入れ替え、文体上の選択などです。記録のみで、修正はしません。
major意味が無視できない程度に変わっている状態。強調点の変化、限定条件の脱落、主張内容の変化などです。修正パスで順方向の翻訳を調整します。
critical意味が誤っている状態。否定の反転、数値の変化、用語の逆転などです。修正パスで順方向の翻訳を調整します。

この切り分けこそが重要です。言い換えられたすべての文を「修正」するチェックでは、良い翻訳まで無駄に揺り戻して、本当に重要な問題を埋もれさせてしまいます。逆に、すべてを検出して何も直さないチェックでは、ただレポートが長くなるだけです。判定があるからこそ、このステージは無害なケースには手を入れず、本当に意味が動いた場合にだけ修正パスを使えます。

自動修正されるもの、されないもの

修正パスが走るのは major と critical のずれだけです。minor のずれは可観測性のために可視化されますが、出力は変更されません。判定にかかわらず、すべての差異を人の目で確認したい場合は human review を使ってください。逆翻訳は自動のガードであって、レビュー担当者の代わりではありません。

定番の手法を自動化#

逆翻訳は Lingo.dev 独自の発明ではありません。人手翻訳の現場で長く使われてきた、定番の品質保証手法です。第二の翻訳者がターゲットテキストをソース言語に戻し、編集者がその二つを比較することで、意味が失われた箇所をあぶり出します。これによって、一度の順方向翻訳では見えにくい失敗――自然に読めるのに、意味が少しずれている翻訳――を捉えられます。

このパイプラインは、その同じ手法を、第二の翻訳者と編集者の代わりに LLM を使って実行します。手法そのものは、すでに確立されています。自動化しているのは、手間と待ち時間です。だからこそこのステージがあります。AIらしさを付け足すためではなく、広く認められた意味チェックを、すべてのロケールに対して毎回ジョブの流れの中で実行するためです。

有効にすべき場面#

逆翻訳が真価を発揮するのは、意味を取り違えるコストが高く、しかも自分ではターゲットロケールを読んで見抜けない場面です。たとえば次のような場合に向いています。

  • コンテンツが 法律・医療・金融・技術 分野である場合。否定の反転や限定条件のずれが、単なる文体差ではなく実際のリスクになります。
  • チーム内の誰も読めないロケール に向けて配信する場合。逆翻訳は、意味が保たれているかを確かめるための唯一の窓口になります。
  • 出力が 高リスクかつ低ボリューム の場合。契約条項、用量指示、コンプライアンス通知のように、追加の確認コストよりも、誤るコストのほうがはるかに大きいケースです。

二度目の翻訳が走るので、コストは上がります

すべての出力に対して完全な逆翻訳と AI 比較を行い、さらに判定が major または critical の場合は修正パスも追加されます。そのため、逆翻訳を有効にしたジョブは、順方向翻訳だけの場合より多くのモデル処理を行います。有効な各ステージは、それぞれのコストをジョブに記録するため、このチェックによる追加分を正確に確認できます。意味の忠実性にそのコストを払う価値がある場面で有効にし、順方向の翻訳だけで十分な大量・低リスクの文字列では無効のままにしてください。

rephrase とも自然に組み合わせられます。rephrase はコピーを自然な表現に整え、逆翻訳は、その自然な言い換えが原文の意味を保っているかを確認します。両者は独立して切り替え可能です。詳しくは パイプラインを設定する を参照してください。

結果の読み方#

他のパイプラインステージと同様に、有効な逆翻訳チェックはジョブの steps 配列に独自の記録を書き込みます。GET /jobs/localization/:jobId でジョブを取得すると、backTranslation ステップを見れば、このチェックが実行されたことと、どう解決されたかがわかります。

json
{
  "id": "ljb_C3d4E5f6G7h8I9j0",
  "status": "completed",
  "outputData": { "clause": "Diese Vereinbarung darf nicht ohne schriftliche Zustimmung übertragen werden." },
  "steps": [
    {
      "stepId": "localize",
      "type": "action",
      "status": "completed",
      "errorMessage": null,
      "createdAt": "2026-04-17T10:00:00Z",
      "startedAt": "2026-04-17T10:00:00Z",
      "completedAt": "2026-04-17T10:00:09Z"
    },
    {
      "stepId": "backTranslation",
      "type": "action",
      "status": "completed",
      "errorMessage": null,
      "createdAt": "2026-04-17T10:00:09Z",
      "startedAt": "2026-04-17T10:00:09Z",
      "completedAt": "2026-04-17T10:00:21Z"
    }
  ]
}

completed が backTranslation のステップであれば、チェックが最初から最後まで完了したことを意味します。判定が major または critical のずれだった場合、そこで読む outputData はチェック前のものではなく、修正後の順方向翻訳です。チェックが付けた重大度の内訳や、ステージの failed または skipped がジョブ全体に対して何を意味するかといった詳細は、パイプライン実行を確認する にあります。ここが steps と warnings を読むための正式な参照先です。

これがこのステージの全体像です。逆翻訳し、段階付きで比較し、意味が動いた場合だけ修正する。これにより、各出力の忠実性は想定ではなく、ジョブの流れの中でその場で検証されます。リクエストごとに有効化することも、エンジンのデフォルトとして設定することもできます。そのうえでステップを見れば、往復しても意味が保たれたかを確認できます。

次のステップ#

パイプラインを設定する
backTranslation を、他のステージとあわせてリクエスト単位またはエンジンのデフォルトとして有効化します。
パイプライン実行を確認する
steps 配列、検出された重大度、completed・failed・skipped の意味を確認します。
自然なコピーに rephrase する
両方を有効にしたときに逆翻訳が検証するステージです。自然に響くコピーでありながら、意味も保たれていることを確認できます。
単一のジョブを取得する
back-translation の結果が表示される outputData と steps 配列を取得します。

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Max PrilutskiyMax Prilutskiy·更新済み 約2か月前·1分で読めます